インパクト測定・管理(IMM)

インパクト投資において、投資後は「インパクト測定・管理(以下、IMM:Impact Measurement & Management)」のプロセスに移行します。本稿では、IMMの取り組みについて概要を記載します。

IMMは、投資前のデューデリジェンスにおいて設定されたインパクトKPIをモニタリングし、投資先の成長を支援するフェーズです。SIIFICは、投資先すべてに対してIMMを実施し、国際的な原則やガイドラインに基づいて対話を重ねながら、投資先が生み出すインパクトの持続的向上に寄与することを自らに課しています。このように、一般的なベンチャーキャピタルとSIIFICのアプローチが異なる点を説明します。

#常に相手の立場で考える「圧倒的な当事者意識」

SIIFICの基本姿勢は、常に相手の立場になって、様々な発生課題に圧倒的な当事者意識をもって全力で向き合うことにあります。資金を提供するだけ、KPIを監視するだけではなく、自ら手足を動かし、インパクト実現に向けて投資先に伴走します。

投資先伴走の形態には「ハンズオン」と「エンゲージメント」があり、SIIFICではそのふたつの言葉を使い分けています。この二つを整理することで、ファンドが単なる資金提供者ではなく、インパクト実現の共創者であることを明確にしています。

#ハンズオン

「ハンズオン」は投資先に発生する課題全てへの対応であり、企業価値と投資リターンの最⼤化のため、以下のような支援を行います。

・経営戦略、開発戦略、事業計画の⽴案、資⾦調達(Grant、Equity、Debt、海外機関投資家との連携等)、外部専⾨家との連携、事業開発、海外展開等を⽀援

#エンゲージメント

 「エンゲージメント」は対話や関係構築を通じて投資先がインパクトを主体的に育てられるよう支えることを指します。具体的には、以下のような国際的なインパクト投資の運⽤原則に基づいたインパクト測定・管理を実施します。

・インパクトの実現に対するファンドマネジャーの貢献を明確化
・インパクトKPIの測定・管理、インパクトレポートの作成
・潜在的なネガティブ・インパクトの評価、対処、管理
・インパクトの持続性への影響を考慮したエグジットの実⾏

#Collective Learning(共同学習)

IMMのプロセスにおける重要な概念として「Collective Learning(共同学習)」が挙げられます。

投資活動や企業運営がどれだけ社会課題解決に貢献したかを評価し、その結果を示すために作成される「Impact Performance Report」というレポートがあります。SIIFICでは、このImpact Performance Reportを成果報告にとどめず、投資家・投資先・関係者が一緒に学ぶための、「共同学習のための青写真」として捉えています。これは、単なる成果の集計ではなく、投資前から投資先と共に考えてきたプロセスそのものを開示するレポートであると考えるためです。投資前からシステム図を一緒に描き、どこにレバレッジ・ポイントがあるかを議論し、さらに設定したインパクトKPIに対してベースラインがどうなっているかを確認していく。こうした過程をレポートにまとめて発信することで、外部からのフィードバックが得られ、そのフィードバックを取り込むことで、投資家・投資先・関係者がさらに学びを深めていくことができます。この一連の過程やチームとしての姿勢が、SIIFICにとっての「Collective Learning」なのです。
このようなアプローチにより、Impact Performance Reportは提出のための成果報告から新しい協働を呼び込むツールに変わり、ファンドと投資先の関係そのものを“監視”から“共創”へと転換させるシステムチェンジにつながっています。

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